芦原妃名子先生を忘れるな!

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原作者の人権

ドラマ化の悲劇

 2024年(平成6年)1月29日、人気漫画家の芦原妃名子先生がお亡くなりになった。『セクシー田中さん』のドラマ化のことで、トラブルがあったという。

田中さん事件とは?

 『セクシー田中さん』は2017年(平成29年)から小学館の『姉系プチコミック』で連載開始。2023年(令和5年)10月に、漫画がまだ完結していない段階でドラマ化された。
 芦原先生はドラマ化を承諾する際、「必ず漫画に忠実に」と約束をした。だが、芦原先生の要望は無視され、毎回、原作を大きく変えた脚本を提出されたという。
 そして、色々あった結果、脚本家が降板。最後の2回は芦原先生が自ら担当する。しかし、それまでの話の流れが変わってしまい、事情を知らない視聴者を戸惑わせてしまう。

返り討ち

 芦原先生は放送後の2024年(令和6年)1月26日に納得ができない視聴者に一連のトラブルを説明。しかし、脚本家への攻撃だと誤解され、28日に記事を削除。その翌日、帰らぬ人となった。番組のTikTok公式アカウントには、原作者を批判したコメントに対して、支持する人もいたという。

悪循環

 芦原先生の悔しさはよくわかる。我が子のように可愛い作品が全国の茶の間で小馬鹿にされる。不満を漏らせば、逆に「テレビのお陰で有名になれるからいいだろ!」と叩かれる。揉め事を起こせば「メンドクサイから関わらない方がいい」と人が離れていく…。
 これだけ周りが冷たければ、「自殺でもしなければわかってくれない…」という気持ちにもなるだろう。何しろ、芯が強い人、熱がある人はゴミ扱い≠ウれる社会なのだから。

手のひら返し

 やなせ先生は「正義はある日を境に逆転する」という話をよくした。『セクシー田中さん』の件も、芦原先生が自ら命を断つまでは脚本家の方が被害者≠セったかもしれない。以前は否定していたくせに、亡くなった途端、コロリと態度を変えた卑怯者≠烽「るだろう。
 友人(?)のコメントなんて聞きなくない。何を今更って感じだ。本当に友人だったら命を救えただろう。「人殺しのレッテルを貼りたいのは、案外、辛い時に一緒に戦ってくれなかったあなたかもしれないよ!」とも言いたくなる。死に追いやったのはテレビ局と脚本家だけではない。見て見ぬふりをした周りの奴らも同罪なのだ。

アンパンマンと田中さん

 芦原先生の痛みがわかるのは、皮肉にも『アンパンマン』のお陰だろう。私だってアニメの『アンパンマン』に言いたいことがたくさんある。大事な作品を茶化されたら、原作者ならずとも黙ってはいられないものだ。
 世界には戦争や飢えで死んでいく人がいる。『アンパンマン』は貧しい国に生まれた人たちの命を救うため、食糧を供給するヒーローが活躍する話だった。しかし、アニメでは派手な暴力で悪を成敗する単純なキャラクターに変えられている。
 「こんなのもはや、『アンパンマン』ではない!」という気持ちだが、アニメで育った人にはそれを理解してくれない。原作を守ろうとすれば、平和を乱す嫌な奴だと思われてしまうのである。『アンパンマン』には、小さな子供を盾≠ノする卑怯者もいる。つまり、「子供の夢を壊さないで!」は、言い換えれば「動くとこの子が死ぬぞ!」って訳だ。

大人の対応?

 芦原先生を精神的に追い込んだのは、やなせ先生にも責任があるだろう。時を同じくして、2024年(令和6年)1月28日、自民党の麻生太郎副総裁は、福岡市内の公演で上川陽子外相について名字を「カミムラ」と間違えた上に、容姿や年齢などを侮辱するような発言をする。これに対して、上川外相は30日の会見で「別に気にしていません」と大人の対応≠見せる。
 麻生副総裁のお陰(?)で好感度を上げたと思われた上川外相だが、ジャーナリストの浜田敬子さんは翌31日、テレビ朝日系の『羽鳥慎一モーニングショー』で「残念だった」とコメント。ここで怒らないと、世の中の女性たちに「嫌な発言は聞き流せ!」という間違ったメッセージを残してしまうことを指摘している訳だ。

子供の対応?

 なぜ、上川外相の話を取り上げたかというと、つまり、「やなせ先生は寛大な人だった!」は「原作者は脚本に口出するべきではない!」という前例≠作ってしまったのだ。
 やなせ先は、仲間の人権≠守るためにも、アニメの『アンパンマン』に厳しくして欲しかった。衝突を避けたいという気持ちはわかるが、目先の平和≠ネど、やがて、何らかなかの形で悲劇に変わる。ジャニーズ事務所の性被害問題とかも、結局はそうだろう。
 私は思う。芦原先生は、決して弱い人間ではなかったと。脚本家にきちんと自分の意見を主張したのは強い人間だからできたことである。強い人間だから、精神的に追い込まれるところまで頑張り過ぎてしまったのだ。そこの優等生ヅラ≠しているあなたには、そういう強さがあるだろうか?

田中さん再び?

 さて、日本テレビはこの事件をどう償えばいいのだろう? 本当に反省しているなら、『セクシー田中さん』をもう一度ドラマ化するべきではないか? 今度こそ、芦原先生が望んでいた原作に忠実な内容で。そして、ドラマで得たお金の9割以上は、芦原先生のご遺族に支払う。お金で済む問題とは思わないが、このくらいの出血でも芦原先生の命≠ノ比べたら足りないだろう。
 もちろん、無理な話だということはわかっている。日本テレビには、お金の前に、罪悪感≠ェないのだから。

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